日本初の「浸透圧発電」とは?
2026年05月13日
日本初の「浸透圧発電」とは?
排水から生み出す新しい再生可能エネルギー
【導入】
再生可能エネルギーといえば、太陽光発電や風力発電を思い浮かべる方が多いかもしれません。
一方で、天候に左右されにくく、安定した発電が期待される新たな技術として注目されているのが「浸透圧発電」です。
福岡市東区の海水淡水化センター「まみずピア」では、日本初となる実用規模の浸透圧発電に向けた取り組みが進められています。
この取り組みでは、これまで海へ放流されていた“排水”を活用し、新たなエネルギーを生み出します。
【浸透圧とは?】
浸透とは、濃度の異なる水が浸透膜を隔てて接したとき、濃度の薄い側から濃い側へ水が移動する自然現象のことです。
身近な例では、次のような現象があります。
・野菜を塩もみすると水が抜ける
・ナメクジに塩をかけると縮む
・木の根が水を吸い上げる
これらも、浸透の仕組みによって起きています。
【『まみずピア』とは?】
まみずピアは、福岡都市圏の水不足対策として整備された海水淡水化施設です。
福岡都市圏は大きな一級河川がなく、水資源に限りがあります。
そのため、渇水時でも安定して水を供給できるよう、海水から真水をつくる施設として平成17年から運用されています。
施設の最大生産水量は1日50,000㎥で、日本最大級の海水淡水化施設です。
【浸透圧発電の仕組み】
今回の発電では、
・海水淡水化の過程で発生する「濃縮海水」
・下水処理後の「下水処理水」
という2種類の排水を利用します。
濃度の違う水を浸透膜で隔てることで浸透圧が発生し、水が移動します。
その水の流れによるエネルギーで水車を回し、発電する仕組みです。
これまで海へ放流していた未利用資源を活用できる点が、大きな特徴です。
【浸透圧発電のメリット】
1. CO₂をほとんど排出しない
浸透圧は自然現象を利用するため、発電時にCO₂を発生させません。
環境負荷の少ない発電方法として期待されています。
2. 天候の影響を受けにくい
太陽光発電は夜間や悪天候時に発電量が下がりますが、浸透圧発電は24時間稼働が可能です。
そのため、安定した電力供給につながる可能性があります。
3. 排水を有効活用できる
これまで使われずに放流されていた排水を活用することで、新たな価値を生み出せます。
SDGsや脱炭素社会の実現にも貢献が期待されています。
【今後の展望】
現在は塩分濃度の高い「濃縮海水」を利用した発電を目指していますが、将来的には通常の海水を活用した発電技術の実用化も検討されています。
地球上の水の約97.5%は海水です。
もし一般的な海水でも効率よく発電できるようになれば、世界中で活用できる新たなエネルギー技術へ発展する可能性があります。
【発電施設の概要】
現在計画されている施設では、
・発電出力:約110kW
・年間発電量:約88万kWh
・稼働率:約91%(見込み)
とされています。
実際の運転を通して、
・発電効率
・水質変化による影響
・システムの最適化
などの検証が行われる予定です。
【まとめ】
浸透圧発電は、「水の濃度差」という自然の力を利用した新しい再生可能エネルギーです。
まみずピアで進められている取り組みは、これまで使われていなかった排水をエネルギーへ変える、日本初の挑戦でもあります。
今後、技術開発が進めば、安定した脱炭素エネルギーとしてさらに注目されるかもしれません。